ぼろぼろの赤い傘。
どうしても欲しくて15歳の誕生日に買ってもらったのに、使い古してと言うより管理を怠けてぼろぼにしてしまったそれを使い続ける生活もその傘も捨ててしまいたかった。
お気に入りの紅茶屋さんで
朝井リョウ著「どうしても生きている」
を読んだ。気づいたら休日で騒がしかった店内も私と2人の客を残して寝支度を始めている。
ひとりでに泣いた。
朝起きて仕事に行ってお腹が空いたらご飯を食べて、気の合う人に会って怒りたいときには怒って、健やかな論理の上で生きている人があまりにも眩しい。
籤運が悪くても舞台の明転・暗転は他人に決めさせてたまるか。
もっと読みたい……
今日は絶対に本を買って帰るんだ。
決意を固めて店を出た。
逸る気持ちでエスカレータを登る手が軽く
傘はどこかに落としてきた。